今次研究計画は、3年間の予定で「都市計画法における公共性と財産権」をというテーマで、都市計画法を支え、あるいはそれによって実現されるべき公共性の内容を明らかにするとともに、その中で財産権、なかんずく土地財産権の特質と再編の方向を究明しようとするものである。その柱として(1)損失補償、(2)都市計画事業法制、(3)土地利用計画をたてた。2002年度には、まず(2)都市計画事業法制の展開を軸として、都市計画における公共性の研究を行った。 今年度は、これに引き続いて、都市計画事業法制についての研究を継続して行った。公共事業の遂行に関わり、常に問題となる官民境界確定の問題を事前に処理するという意味あいをも持つ地積調査事業についての法的検討は、昨年度学会報告として行ったが、今年度論文としてまとめた。 さらに、土地利用規制を含む都市計画法制の新たな展開と、そこでの公共性のあり方について、研究を行い、やや包括的ではあるが単著論文として、そして実務家との共同の検討会で展開し、監修という形ではあるが、以前刊行した本の改定版としてまとめた。この土地利用規制を中心とした都市計画法制の法理の検討は引き続いて進めており、2004年度には公表するようにしたい。 また、昨年度から今年度にかけて、行政組織・行政活動をめぐる訴訟の制度に大きな展開があった。1つは住民訴訟制度の改正であり、今1つは行政訴訟制度改革の議論である。これらは、都市のあり方あるいは都市計画の遂行に関わっても大きな問題をはらむものである。これに関しては、地方公共団体の定めた条例を争う訴訟、および住民訴訟特に四号訴訟について、研究の一端をまとめた。
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