本年度は、2002年7月から8月にかけてオランダのハーグ国際法アカデミーで行われた「国際法の国内適用」と題する特別講義の準備とまとめに精力を傾けた。同アカデミーでは、7月29日からの5日間、50分の講義を5回と90分のセミナーを2回行った。 講義は、国内適用可能性の概念の批判的分析を中心に行った。国内適用可能性という概念は、アメリカ法に起源を有するが、今日では条約が国内的効力をもつ国で普通に用いられているそして、この概念はEC法において注目すべき発展を見せているそこで、アメリカ法及びEC法における定義や用法を綿密に分析したうえで、一般的な考察を行った。国際機関の決議や司法判断に関しても同様の問題が生じるかの検討も行った。 国内適用可能性の概念に個人の権利義務を創設するということを含める説は有力であるが、国内適用可能性は、国内においてそれ以上の措置の必要なしに直接適用されうることと定義し、個人の権利義務創設とは別の問題ととらえるべきである国内適用可能性と国内的効力が混同されることは少なくないが、この2つの問題ははっきり区別すべきである国際法が国内で効力をもつことは直接適用されるための必要条件ではあるが十分条件ではないからである。国際法が国内で直接適用されうるかは当事国の意思によって決まる、それは国際法の問題だ、という説が有力であるしかし、当事国の意思を探求するのはあまり意味がない。国際法が国内で直接適用されうるかは、国内法が決定する問題というべきであるただ実際には、その決定基準は諸国においてだいたい共通している国際法規定が国内で直接適用されうるかは当該規定の明確性にかかるとされることが多い。
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