論文「開発協力と国際法」において、近年、国際投資法の主要な論点が、国際法における伝統的な問題である「外国人財産の保護」に関する「慣習法」の漸進的発達から、外国投資の受入れ、待遇、保護、紛争の解決を規定する「投資条約」の内容に移ってきていることの経緯と背景を、途上国の発展の観点から検討した。次に、二国間投資条約並びに北米自由貿易協定、メルコスール投資協定、エネルギー憲章条約等の多数国間条約を含む投資条約において規定されている投資紛争解決手続規定特に国家と投資家との間の仲裁条項を分析し、かつ、かかる仲裁条項に基づくICSIDその他の仲裁裁判所の仲裁判断を分析することにより、国内的救済手続と国家と投資家との間の仲裁手続との関係、さらにはかかる仲裁手続と外交的保護や仲裁裁判等の国家間紛争解決手続との関係についての資料を収集し主要な論点を検討した。特に、国内的救済手続と仲裁手続との関係について、仲裁条項によれば、仲裁に付託する前に国内的救済手続に付託することを規定する伝統的方式、国内的救済手続と仲裁手続のいずれか一つの手続に付託することを投資家の選択にゆだねている二者択一方式、および、伝統的方式と仲裁手続のいずれかの手続を投資家の選択にゆだねている方式の三つに大別することができることが明らかになった。それによれば、投資家が投資紛争を国内的救済手段を尽くすことなく直接に仲裁に付託することを認められることがあり、この場合には、仲裁手続の性質機能、国内的救済手続の性質機能の変容およびその外交的保護制度に及ぼす影響等の問題を明らかにする必要がある。そのような観点から、国連国際法委員会における「外交的保護」に関する議論の内容についても検討を開始した。
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