1.今年度は本研究の最終年度であるが、近年の地域貿易協定の爆発的増加に伴い、各地域の経済統合の全体的状況を把握する必要性を痛感し、特に東アジア地域と南米地域の一般的動向を調査した。その成果は、一部を国際法学会編纂の国際法辞典の項目として公表した。 2.平成16年8月に開催されたInternational Law Association(国際法協会)ベルリン大会に出席し、国際貿易法、国際仲裁および国際環境法のトランスナショナルな執行に関する部会に出席し、意見交換を行うと伴に、地域的経済統合に関する最新の学会動向の情報収集を行った。 3.同8月に開催されたドイツ・フランクフルトでのポストILA-WTO会議に出席し、"Multilateral Environmental Agreements and the WTO Law"(「多数国間環境協定とWTO法」)というテーマで研究報告を行ったほか、EUとWTO法の関係に関する他の研究者の報告を聞き、討論に参加し、地域貿易協定とWTO法の関係について情報収集を行った。また、その帰途には、フランクフルトの弁護士事務所を訪問し、EUが域外諸国と締結している地域貿易協定の動向についてインタビューを実施し、情報の収集に努めた。その結果、とくに単に地域経済統合内部の貿易制限の問題だけではなく、複数の地域的経済統合相互間の貿易制限もWTO法との関連で問題となりうることを認識することができた。 4.多くの地域貿易協定中に含まれる地域的環境保護条項に関連して、とくに「貿易と環境」の問題をWTO法の観点から考察し、その成果を公表した。 5.以上の海外出張の研究成果は年度内に公表することができなかったが、次年度内には実現したい。また、全体の研究成果の公表も、諸般の事情から若干遅れているが、可能な限り速やかにまとまった形で実現したい。
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