平成15年度は、前年度に収集した国際テロリズムに関連する資料文献および国際法関係の文献の整理および本年度再度ヨーロッパの大学や研究所で収集した資料文献の整理を行い、それらをもとにして、今日も続くテロと反テロ戦争について検討を行い、さらにテロリズムをめぐる国際法的研究を進めた。 9・11事件以後、アフガニスタン戦争やイラク戦争について米国を中心に「反テロ戦争」という呼称が用いられているが、そもそも国際法上未だ定まらないテロリズムの概念とその法的意味について、まず歴史的検討から始めた。ついで、米国務省のテロ集団リスト、国家テロリズム、テロリズムの国内法規則などに定められたテロリズムの定義を分析し、また、テロリズム関連の多数の国連条約と地域条約のテロリズムないし犯罪行為に関係した定義を検討した。 次に、前年度から続けている、最近の具体的紛争の検討に進み、テロ行為とその認定についての国際人道法の適用の可否、具体的にはテロ容疑者に捕虜の待遇を与えるべきか否かといった問題、また、テロ犯罪者に対する国内裁判所または国際刑事裁判所での処罰の問題などを検討した。その結果、テロ行為防止のための国際法規制は不十分であるが、テロリズムに対する人道法や国際刑事法の適用は可能であることが明らかになった。 これらの研究の成果は、すでにいくつかの研究論文に発表しているが、今後全体を纏めて、研究書として発表する予定である。
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