研究概要 |
第一に,社会環境の変遷に合わせて著作権制度が変転してきたという歴史認識の下,インターネットが著作権制度に与える影響に対し,第3の波という位置づけを与えたうえで,著作権が,インセンティヴを確保するための効率的な手段となるとともに,私人の自由を過度に制約することのないように,変容していくべきであるという筆者の提言を精緻化する作業を行った。特に,アメリカ合衆国における契約価格差別理論を題材に,法と経済学の議論を紹介し,効率性を追求する立場であったとしても,著作権制度の強化が必ずしも資源配分の効率性の改善をもたらすわけではないことを明らかにし,論文として公表した。 第二に,労働市場の流動化に伴い頻発している職務発明の帰属や補償金の算定の金額を巡って元の企業と係争となるケースについて,関連事件を手掛けている東京永和法律事務所等に赴き,包括クロスライセンスがなされている場合の補償金の算定のありかた,外国出願され外国の特許となった結果,外国で利益を得た場合の準拠法選択について鑑定を書き,現場の実務的な問題を吸い上げた。そのうえで,デフォルトルールズとしての特許法35条という考え方を打ち出し,同条の趣旨を解明するとともに,発明の適度な創出のためのインセンティヴとして必要な補償金額のありかたを提言する分析を行った。近日中に研究代表者と研究分担者の共著の論文を発表する予定である。
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