医療行為における同意代行の問題を検討する前提として、「医療行為における同意」自体を検討する必要性がある。そこで、椿寿夫主催の民法研究塾において「インフォームド・コンセント」に関する報告をした(7月13日流山市東部公民館)。さらに、来年度の4月にもこのテーマでの報告を予定している。 前年度には代理規定の法定代理への適用の問題を主に検討したが、前年度末から本年度にかけては、法定代理の各論として、法定代理の中心的類型である、親権者の地位を検討した。唄孝一主催の代諾勉強会において、前年度末に、親権者の財産管理権・代理権および身上監護権に関する従来の議論を整理して報告した(前年度3月22日早稲田大学)。これを基にして、日本生命倫理学会第15回年次大会ワークショップ3「小児医療領域における意思決定と代理判断」において「わが国の親権について」の報告を担当した(11月15日上智大学)。さらに、前記代諾勉強会において親権者の身上監護権と医療行為に関する家族法学説における議論を整理して報告した(12月20日早稲田大学)。次に、法定代理権の範囲について、椿寿夫主催の法律行為研究会(12月13日明治大学)および前記代諾勉強会(3月6日早稲田大学)で報告した。 なお、以上の作業と平行して、法定代理の重要な類型である成年後見を開始する審判の基準を検討し、家庭裁判所の実務が、いわゆる生物学的要素を過度に重視していることを分析した。また、財産取引における意思無能力無効に関する判例を検討し、法定代理の危険性を考慮して、無理に行為能力制度に移行させるより、意思能力制度での解決の必要性があること、および、裁判実務がこれに対応していることを明らかにした。
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