本研究は、UNIDROITの可動物権担保条約を中心とするものだが、同条約自体が、担保法の国際的統一を目指す、他の様々な動きと関連しているため、研究対象を、国連国際商取引委員会担保法ガイドライン等に拡大しなければならなかった。そのうえで、基礎資料として、米州機構の米州間担保付取引モデル法とアフリカ商取引統一機構の担保統一法については、翻訳を完成した。現在、その発表形態等をめぐって、米州機構、アフリカ商取引統一機構と協議しているが、法学協会雑誌に発表の予定となっている。 次に、UNIDROITの可動物権担保条約を踏まえたわが国法の改正案については、研究成果報告書第2部に草案としてとりまとめた。簡易な実行方法を準備するとともに、根抵当型を原則とする方向が妥当であることを明らかにできた。また、登記制度について、それをたんに警告機能を有するものとして再編成することの可能性についても検討し、これは、研究成果報告書第1部の研究報告でその結果を明らかにした。 ほかに、動産担保に関する現行法解釈としては、動産・債権譲渡特例法の理解が重要となる。これについては、『現代民法III(担保物権法)(第2版)』の中で展開することとし、既に脱稿した。結局、新法は、公的なネームプレート制度だと理解するのが妥当であり、その意味では、UCC型担保制度にはほど遠いものである。 他に、各論的な研究として、セキュリティ・トラストについては、研究成果報告書第1部において、その有効性を取りまとめた。結局、担保物の換価金が債権者に行くということが確保されれば、担保権者と債権者とを分離することに理論的な支障はなく、その確保は信託によって可能であるということである。また、登記制度のあり方についても、研究成果報告書第1部において取りまとめた。権利内容を公示するための登記から、調査のきっかけとしての登記へと理念を変容することが必要である。
|