実体法(民法)と手続法(民事執行法)が交錯する領域について、文献を中心に従来の判例・学説を研究し、法解釈論の現状、現行法の問題点及び立法の具体的課題の把握につとめている。研究代表者は、とりわけ、ここ数年の立法課題であった担保・執行法の改正作業に法制審議会の臨時委員として実際に関与するとともに、その内容について、学問的に研究し、その成果を発表することにつとめてきた。 平成15年度に平成15年の法改正についての論文を発表したのに続き、平成16年度には、少額訴訟債権執行手続の創設、最低売却価額制度の見直し、間接強制の適用範囲の拡大、執行手続の分野での裁判所書記官権限の拡大などを内容とする改正法が成立(平成16年)したので、その法案段階で内容を検討・紹介する論文を公表した。また、15年・16年の改正を通じて重要事項の一つであった、少額金銭債権の執行手続上の保護について検討した論文を、日本民事訴訟学会の機関誌に発表した。この論文は、改正法をめぐる解釈論・立法論上の問題点を、わが国の今回の改正のモデルとされたドイツ民事訴訟法の規定及びその基礎にあるドイツの執行手続の基本原則とわが国のそれとを比較する方法によって、詳細に検討したものである。さらに、過去10年間の民事執行法関係の最高裁判例のうち重要なもの19件を分析し、その流れを総括することによって、担保・執行法分野における法解釈論上の重要問題を検討した総合判例研究を所属している研究会の10周年を記念する論文集に執筆した。
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