今年度は、本研究の第二年目にあたる。比較法的研究の対象として、当初の予定通り、昨年実態調査を行ったドイツとヨーロッパの中でも、家族観の比較的異なるギリシャを選んで、研究、法律家に対するインタビューを行った。その分析はまだ十分進んでいないが、とりあえず筆者の現在の問題意識をギリシャの学者に理解してもらうために、ギリシャで出版された記念論文集(Festschrift fur Beys)の中に筆者の論文"Die Reform des Gesetztes uber das Verfahren in Familiensachen in Japan"を発表し、日本の立法動向をギリシャに伝えたうえで、ギリシャでは同一の問題について、どのような手続をもっているのかを文献や調査によって検討するという手法をとった。その最終的な結果には今少し時問を要する。ギリシャにおける離婚訴訟を傍聴して見る限り、基本的には日本の手続と異なることはなく、非訟事件としてではなく、訴訟事件として審理がなされている。付随事件の実態をしらべる必要があるが、収集した文献によって分析をすすめているところである。 この間、筆者は家庭裁判所の各種研修の講師をつとめた。4月から人事訴訟の職分管轄が地方裁判所から家庭裁判所へと移管される。それに伴い、立法的整備(人事訴訟法、2004年4月1日施行)が行われたが、具体的にこれをどのように運用していくのか、未知の部分があり裁判所としても家裁における訴訟のあるべき姿を模索しているようである。筆者なりに、いまだわずかの比較ではあるが、比較司法制度の見地から、特に当事者の手続保障に焦点を合わせる形で、研究の成果を家裁の研修で披露してみた。
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