平成15年に人事訴訟法が制定され、人事訴訟規則とともに平成16年4月1日から施行されている。本研究は、人事訴訟をそれまで平和の裁判所として訴訟を意識的に排除してきた感のある家庭裁判所で行うためのさまざまな問題を理論的に解明することを目的としてきた。家庭裁判所において人事訴訟が始められてからすでに1年が経過しようとしている。今年度の研究は、地方裁判所から家庭裁判所への管轄移管後の人事訴訟の施行状況を見ながら、現実の訴訟において、理論的課題とされてきた諸問題がどのように取り扱われ、処理されているかを主たる対象とした。また今年度は、特に人事訴訟の上訴審の審理のあり方に着目し、2度目になるが、ドイツにおける家庭裁判所での第一審と高等裁判所での上訴審について研究を深めるために、短期間であったがドイツへの出張をも行った。 人事訴訟の家庭裁判所への職分管轄の移管は、調停制度との連携が可能となること、家裁においては家事調査官による調査を利用することが出来、よりきめ細かな審理ができることが移管の理由となっていたが、家事調停が人事訴訟の家裁での遂行により、どのように変化するかは大きな問題であった。研究代表者は、この点の変化の様子を調査した。さらに家事調停や家事審判における家庭裁判所調査官の仕事ぶりと人事訴訟の附帯申立事項での調査のあり方の比較に興味を覚え、これを研究の対象とした。これらの研究の成果については、11研究発表の欄を参照いただきたい。なお比較法的研究のとりまとめには、非訟事件に関する文献の調査が必要と考えているため、少し時間がかかる予定である。
|