商法改正により規制が撤廃ないし緩和されつつあり、これは実質的には会社法が任意法規化されつつある現象と捉えることができる。このような流れの中で、会社法全体として整合性のとれた法制度を維持していくためには、個々の規定をそのつど実務界の需要等に応じて任意法規化していくという手法では足りず、それに加えて、どのような会社法の規定についてはどこまで強行法規性の緩和を正当化しうるか、全体としての理論的な整理・分析が必要である。 今年度の研究では、まず閉鎖会社について、会社法の強行法規性の緩和を正当化しうる根拠が何であるかを検討した。そして閉鎖会社においては、株主数が少ないために株主間に真の合意が成立しやすく、契約自由の原則を妥当させやすいことが、会社法の強行法規性を緩和できる主たる根拠となり、これは、公開会社とはまったく異なるという基本的視座を得た。 任意法規化を許容することのできる閉鎖会社の範囲については、株主が少数の会社とする考え方、株式の譲渡制限会社とする考え方などがありうる。任意法規化を認めることのできる類型の規定としては、基本的には、債権者など第三者保護の規定は含まず、内部的な規定に限るべきであるという知見を得た。任意法規化の方法としては、定款自治、株主間契約など様々な方法がありうる。 今後の研究においては、平成13年および同14年の商法改正によって任意法規化が実現した具体的な制度や規定を視野に入れつつ、最近の商法改正の当否についても検討を行っていく必要がある。
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