商法改正により、実質的に会社法が任意法規化されつつあるが、このような流れの中で、会社法全体として整合性のとれた法制度を維持していくためには、個々の規定をそのつど実務界の需要等に応じて任意法規化していくという手法では足りず、それに加えて、どのような会社法の規定についてはどこまで強行法規性の緩和を正当化しうるか、全体としての理論的な整理・分析が必要である。 今年度の研究では、平成14年度における閉鎖会社に関する研究を基礎として、商法の具体的な規制についての立法論的検討を行った。とくに平成13年および14年には、大規模な会社法改正が実現し、わが国の会社法制は、従来の強行法的規制を撤廃ないし緩和する方向に大きく動いた。その中には、自己株式取得・保有規制の緩和、株式単位の自由化、新株予約権制度の創設、種類株式の拡充、委員会等設置会社制度の導入など、公開会社・閉鎖会社に共通して強行法的規制が撤廃・緩和されたものもあり、また、取締役・監査役の選任に関する種類株式の新設や、株主総会の招集手続の簡素化のように、とくに閉鎖会社向けに強行法的規制が撤廃・緩和されたものもあるが、全体として正当な改正であったと評価できるものの、立法論としてなお再検討を要する事項もある。 平成17年には、会社法制を現代化するための大規模な商法改正が予定され、現在、改正に向けた作業が進行中であるが、この商法改正では、より一層、会社法の任意法規化が進められる可能性がある。改正が提案されている具体的な制度や規定を視野に入れつつ、今後の商法改正の当否についても検討を行っていく必要がある。
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