近年の相次ぐ商法改年により、実質的に会社法は任意法規化されてきたが、このような流れの中で、会社法全体として整合性のとれた法制度を維持していくためには、個々の規定をそのつど実務界の需要等に応じて任意法規化していくという手法では足りず、それに加えて、どのような会社法の規定についてはどこまで強行法規性の緩和を走当化しうるか、全体としての理論的な整理・分析が必要である。 本年度の研究期間中に、2つの重要な商法改正が実現した。1つは株券不発行制度の導入であり、公開会社については株券を完全に廃止するが、閉鎖会社については株券の発行は定款自治に委ねられることとなった。もう1つは電子公告制度の導入であり、株式会社は定款で、インターネットによる公告の方法を採用できることとなった。これらの改正もまた、「定款自治の範囲を広げるものであり、会社法の任意法規化の拡大の現象の一局面と位置づけることができることから、本年度は、主にこれらの制度についての検討を行った。 さらに平成17年には、会社法制を現代化するため、諸制度間の規律の不均衡是正、および社会経済情勢の変化への対応という2つの面から大幅な見直しが予定されている。とくに閉鎖的な株式会社については、従前の有限会社制度を株式譲渡制限会社の一類型として株式会社制度に取り込むとともに、大幅な定款自治が認められることとなる見込みである。たとえば会社は、定款により多様な態様の株式譲渡制限を行うことが可能となり、また、定款により多様な機関の設計を選択することが可能となる。本年度は、任意法規化の拡大という観点から、この改正提案の当否について検討を行った。この改正が実現したあとは、改正の当否についての検証作業を行っていく必要がある。
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