平成17年6月29日、新会社法が成立し、会社法制を現代化するための大改正が実現した。同改正は、条文の体系の組替え等、形式面での会社法制の現代化を行うとともに、実質面においても、諸制度間の規律の不均衡是正、および社会経済情勢の変化への対応という2つの面から、会社法制の大幅な見直しを行った。とくに中小企業については、従前の有限会社制度を、全株式について譲渡制限をした株式会社の一類型として株式会社制度に取り込むとともに、大幅な定款自治が認められることとなった。大企業においても、企業の競争力を強化する観点から定款自治が拡大し、会社の自由度が高まった。たとえば会社は、定款により多様な態様の種類株式を創設することが可能となり、また、定款により多様な機関の設計を選択することが可能となった。 近年の相次ぐ会社法改正により、実質的に会社法は任意法規化の一途をたどってきたが、新会社法の成立により、会社法の任意法規化が一層推し進められることとなった。このような流れの中で、会社法全体として整合性のとれた法制度を構築し、維持していくためには、個々の規定をそのつど実務界の需要等に応じて任意法規化していくという手法では足りず、それに加えて、どのような会社法の規定についてはどこまで強行法規性の緩和を正当化しうるか、全体としての理論的な整理・分析が必要である。今年度の研究では、主に任意法規化の拡大という観点から、新会社法による会社法制の実質変更部分を中心に検討を行った。全体としては中小企業についても大企業についても、会社法制は大幅に改善されたと評価できるものの、立法論としてなお再検討を要する事項もある。
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