近年の相次ぐ会社法改正により、実質的に会社法は任意法規化の一途をたどってきた。任意法規化の流れの中で、会社法全体として整合性のとれた法制度を構築し、維持していくためには、個々の規定をそのつど実務界の需要等に応じて任意法規化していくという手法では足りず、それに加えて、どのような会社法の規定についてはどこまで強行法規性の緩和を正当化しうるか、全体としての理論的な整理・分析が必要である。本研究は、主に任意法規化の拡大という観点から、近年に実現した会社法制の実質変更部分を中心に検証を行い、立法論上または解釈論上の問題を検討した。 とくに本研究期間中、新会社法が制定され、会社法制を現代化するための大改正が実現した。同改正は、条文の体系の組替え等、形式面での会社法制の現代化を行うとともに、実質面においても、諸制度間の規律の不均衡是正、および社会経済情勢の変化への対応という2つの面から、会社法制の大幅な見直しを行った。とくに中小企業については、従前の有限会社制度を全株式について譲渡制限をした株式会社の一類型として、株式会社制度に取り込むとともに、大幅な定款自治が認められることとなった。大企業においても、企業の競争力を強化する観点から定款自治が拡大し、会社の自由度が高まった。たとえば会社は、定款により多様な態様の種類株式を創設することが可能となり、また、定款により多様な機関の設計を選択することが可能となった。会社法の制定により会社法制が全体として改善されたことは疑いないが、なお検討すべき課題も少なくない。新会社法制定の立法の当否についての検証作業は、引き続き行われる必要があると思われる。
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