消費者に対する信用供与により成立した債権(貸付金債権)の流動化について、考察を行ない、以下のような成果を得た。 (1)貸金業規制法22条2項は、譲受人に、書面交付義務などを課している。しかし、これらは、消費者に対する貸付金債権を流動化する際には、SPV(信託、SPCなどのビークル)に、書面交付義務を課すことを意味し、実際的ではない。貸付金債権を、効率的に流動化することは、貸金業者の資金調達コストを下げ、その結果、消費者に対する貸付金の利息の引き下げを可能とする。したがって、なんらかの現実的な方策を提案する必要性は高い。 (2)債権譲渡特例法は、登記により、指名債権譲渡の第三者対抗要件を備えることを可能とする。しかし、登記によっては、債務者対抗要件は備わらない。したがって、譲受人から債務者(消費者)に対して支払い請求をすることはできない。この場合は、貸金業規制法22条2項の適用はないと考えるべきである。なぜならば、貸金業規制法22条2項は、譲受人が、債務者(消費者)に対して支払いを請求する局面で、その法律関係の内容が、書面によって、消費者にとって明らかになるようにするということにねらいがあるからである。 (3)これに対して、特定債権事業規制法は、公告により、指名債権譲渡の第三者対抗要件と、債務者対抗要件を備えることを可能とする(現行法の下では、適用対象は、リース債権、クレジット債権に限られる)。取立ての委任が譲渡人に対して行なわれ、その解除が制限されている。したがって、実際上は、譲受人から債務者に対する支払い請求は、想定されていない。しかし、(2)と異なり、支払い請求をすることはできると考えられる。このような場合に、貸金業規制法22条2項の適用の可否については、慎重な検討を要するというべきである。
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