利息規制については、これまで、民事上の利息規制と刑事上の利息規制とが異なること、および、貸金業者に対しては、民事上の利息規制の原則的規律と異なり、一定の要件をみたすと、制限超過利息の返還が請求することができないという特別の規律があることが、従来より問題として指摘されてきた。 平成18年、最高裁判決(3件)は、この貸金業者に対する特別の規律の適用範囲を相当程度制限する、画期的な見解を示した。その要点は次の通りである。利息制限法の制限を超える利息の約定は無効であり(利息制限法1条)、したがって、無効な利息の支払がないと期限の利益が喪失する旨の期限の利益喪失特約は無効である(制限利息超過部分の利息の支払いがないと、期限の利益が喪失する旨の部分が無効である)。このため、制限利息超過部分の利息の支払いがなくても、期限の利益は喪失しないが、債務者は、制限利息超過部分の利息の支払いがないと、期限の利益が喪失し、高額の遅延損害金を支払う責任を負うと誤解して、制限利息超過部分の利息の支払いをしたものであって、したがって、この支払いは事実上強制されたものであり、債務者の自由'な意思によるものでない。そのため、貸金業規制法43条の要件である任意の要件をみたしていないというものである。 貸金業規制法の適用を前提としつつ、期限の利益喪失特約を介在させた法律構成により、利息制限法の判例による解釈を復活させるものとして、高く評価されるべきである。
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