翻訳3点の原本は、ノルウェーにおける刑事和解手続の推進者ニルス・クリスティーエの著作である。我が国においては司法制度改革の一環として、刑事裁判における私人の損害賠償請求制度や被害者参加制度が施行されたが、ノルウェーでは刑事事件そのものの和解を民事上の和解とともに試みる制度がある。オスロ大学の刑事政策の正教授クリスティーエは、ノルウェーにおけるその精神的基盤を確立した人物であり、民事及び刑事の手続きの融合の思想を知る上で、上記の翻訳は意味があると考えている。 簡易裁判所の本来的機能と将来についての発表は、裁判所のアクセスの観点から、ドイツ及び英国の調査を踏まえ、これらの国の裁判所の位置的事情を比較の対象に、我が国において裁判所の位置や数のあるべきかたちについて報告したものである。 論説「守秘義務について」は、裁判員制度の設計、施行にともない、にわかに世間の衆目を集め賛否の議論が活況を呈するものの、いまだ十分な基礎的研究のなされていない守秘義務のあり方について、これまで我が国において民事及び刑事に関わり市民の司法参加の認められていた制度における守秘義務や、同じ司法に携わる職業裁判官のそれとの相違や日本国の母法国であるドイツ制度の裁判官や名誉職裁判官の守秘義務の沿革にまで遡り歴史的意義を探求し議論することで、今後の民刑量手続きにおける司法機関の判断主体の守秘義務に対する考え方に関する基本的な資料を提供するものである。
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