1.まず、関連する資料を収集したうえで国内の理論状況を確認する作業を行った。平行して、多数当事者が関与したと思われる判例の事案(とりわけ近時の環境あるいは入会をめぐる裁判例)を分析し、可能な限り紛争の実態を明らかにする作業にも取り組んだ。これらの訴訟においても、伝統的には紛争主体の数だけ紛争があり、したがって複数の訴訟がまとめて処理される現象であるとされてきたが、そもそも主体との関係において紛争はその数だけあるのか、あるいは一つなのかは、実はほとんど議論されてこなかった。利害関係者は多数いるが中心となって争ってきている者はわずかであるというのが、紛争の実状ではないであろうかという視点から、公刊されている多数当事者が関与した裁判例を検討してみたところ、中心になっている者だけを当事者として扱い、ほかの者はその当事者に訴訟追行をゆだねているとみて、訴訟を規律するほうが実体にあっているような紛争が存在することが明らかとなった。 以上をもとに、次年度以降、紛争においてどのような地位についている者を訴訟主体にすべきか、多数いる利害関係者の内どの範囲の者を訴訟に取り込むのか、訴訟上どのような地位を与えればよいのか、あるいは判決の効力を受ける者に対して手続保障はどうあるべきかなどを検討する。 2.以上のような基礎作業を進める一方で比較法的研究にも着手し、英米・独仏などの資料の収集を行った。次年度以降の課題となるが、ほかの制度では多数当事者紛争をどのように処理しようとしているのかを明らかにすることを予定している。そして、併せて、できるならば裁判例も検討し、実際の問題点も明らかにしたい。 3.本研究は、14年10月に入ってからの追加採択であったため、本年度は、資料の収集と分析が研究の中心となった。しかしながら、1.で記載した裁判例の分析については、複数の研究会で報告し、多くの有益な指摘を得ることができたので、次年度以降、引き続き、計画通りの研究と分析を続けていく。
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