1 (1)最近の各種統計データにより、全国、東京(および豊島区)、長野県の民事法律扶助と法律相談の概要と動向を把握し、訴訟件数の動き、経済社会状況との関係を分析した。とりわけ、法律扶助件数(とりわけ自己破産代理援助)の急増が、配分された資金のモニターと優先順位の設定の必要性をもたらし、各種方策が試行されている状況と問題点が明らかになった。予算管理の問題はイングランドの法律扶助改革において経験ずみであり、拙稿で紹介していたが、日本の現状についてさらに比較分析したい。(2)文献や聞き取りから、これらの経験的データを規定する諸要因と相互関連性について一定の理解が得られた。本年度から本格化した司法制度改革推進本部の司法アクセス検討会とADR検討会における議論とそこでの各種利害・理念の闘争・妥協は、規定諸要因を集約しており、検討会での言説をさらに分析し、制度再構築をめぐる政治的・社会的・思想的文脈を明らかにしたい。(3)最近、NPOによりmediationと相談サービスを提供しようという試みがあり、大阪・東京・神奈川の関係者や司法書士会への聞き取り等により、理念、具体的なサービス内容、課題が明らかになった。法律相談とmediationの関係と連携は、理論的にも実践的にも重要であり、さらに分析したい。 2 イングランドのコミュニティ・リーガル・サービスの現状については、文献と現地調査により、コミュニティ・リーガル・サービス・パートナシップの評価、Citizens Advice Bureauのボランティア相談員の評価と課題、裁判所における受付相談・本人訴訟支援の新機軸、mediationとの連携および法社会学的評価、利用者からのフィードバックの具体的手法などの知見が得られた。関連して刑事弁護サービスにおいてスタッフ制(公設弁護人)が導入され、開業弁護士との比較のための評価方法が議論されており、わが国のリーガル・サービス・センター(仮称)構想を吟味する一助としたい。
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