1 本年度は、昨年度の研究成果を踏まえて、データの補足収集と分析および研究のとりまとめを行った。 特に重点を置いたのは、日本については、豊島区における法サービス提供の新しい試みである公設法律事務所(池袋の東京パブリック法律事務所)の活動形態とその機能、東京と長野における司法書士による法サービス提供の実際とADRサービス提供に向けての動き、ヤミ金融被害者と自己破産をめぐる法律扶助の実態と制度改革の動き、自治体における法律相談とADRに関するADR検討会における議論、司法ネット構想の成立と問題点である。 イングランドについては、コミュニティ・リーガル・サービス導入後の状況について、全国レベルの施行評価、第一回全国リーガル・ニーズ調査の結果、第一線のジェネラリストによる助言と分野別の専門家のサービスとの連携方法、模擬依頼者を用いた相談窓口調査である。特に、初回面接における窓口対応の重要性と、第一アクセスポイントと専門家とのネットワーク構築が課題であることが、施行評価、リーガル・ニーズ調査、相談窓口調査のいずれにおいてもデータによって明らかにされている点は、わが国にとって示唆するところが大きく、司法ネットの制度化にあたっても留意すべき点である。 2 研究成果の一部は既に脱稿したが(2004年中に刊行予定)、そのほかについても論稿にまとめて『立教法学』等への公表を準備中である。また、2003年度から発足した特定領域研究「法化社会における紛争処理と民事司法」において、私はA02班の研究代表者として「紛争過程における情報探索行動の役割」を担当しているが、本基盤研究の成果は、既に特定領域研究の質問票作成作業に活用した。さらに今後問題に直面した人々の情報探索行動の分析に生かしていくつもりである。
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