本研究は、民事法律扶助・法律相談制度とその運用について、日英比較を通じて、公的資金による法サービス提供システムをどのように構築したらよいかという課題を考察するための手がかりを得ることを目的としている。研究成果の概要は以下の通りである。 1.イングランドのコミュニティ・リーガル・サービス導入後の状況について、基本的統計、施行評価報告書、第一回全国リーガルニーズ調査、「アクセスの解明」調査などを検討した。 2.日本の法律扶助の現状と課題を、全国、東京、長野について検討した。 3.一般法律相談の現状を、豊島区と長野市について検討した。 4.消費生活相談の現状を、全国、豊島区、長野県について検討した。 5.長野県の司法書士による法律相談の現状について概観した。 6.イングランドのカウンティコートの近年の状況について分析した。 7.ADR基本法制定を巡る議論の問題点について分析し、司法制度改革推進本部のADR検討会における議論の趨勢は、日本型紛争管理システムの再生産をもたらす危険性について「法の支配」の理念に照らした吟味を充分行っていないことを明らかにした。 8.わが国の司法ネット構想に関して、イングランドのコミュニティ・リーガル・サービスが示唆する点として、地域の関係主体によるパートナーシップ組織の意義、ならびに、リファーラル・ネットワーク構築の要点を示した。 9.入手した資料に関してなお残された分析についてとりまとめたうえで公表を予定している。
|