(1)本研究にとって、環境権の憲法・法律への立法規定化、あるいは訴訟および参加のあり方の制度化は、基本的に前提となる重要なテーマである。 (1)フランス法については、昨年度から本年度にかけて、環境権の憲法規定化を図ろうとする「環境憲章」制定の動きがあるので、その立法動向を研究した。フランスでは、環境団体の参加の権利と訴える権利は、1976年以来承認され、拡大されてきた。環境憲章は、環境権を憲法規範化し、具体的な原則をあげることによって、環境政策をさらに拡大、発展させようとするものであり、環境団体の法的地位にも影響を与えるものと推測される。また、参加のシステムとして、1995年、デバ・ピュブリック(公共討論)の制度がバルニエ法によって設けられたが、2002年にこれが国の独立の機関として管轄と権限を強化された。この制度は、環境紛争と訴訟がしばしば提起される公共事業に関わる情報の提供と討論を通じての参加の制度であり、環境法における団体の地位に深く関係している。制度の概要を調べた。(2)日本法については、環境訴訟に深く関係する訴訟形態の一つである行政訴訟の制度改革が進行中であったため、その制度化の動向を注視したが、環境(権)訴訟を実現する制度改革とならない改正案となっており、環境権・環境訴訟の必要性と団体の訴える権利の承認の必要性は変わっていない。 (2)環境紛争において団体がどのような法的な地位を与えられるべきかの問題の舞台となる場は、裁判のみならずADRも重要である。公害環境紛争の処理に関わる訴訟と公害紛争処理制度の研究を行った。 (3)環境NPOの動向を研究協力者の協力を得て調査し、概要をまとめた。
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