本年度は、次のような研究を実施した。 1.マクロな把握として、全国の環境NGO・NPOの概況を調査した。これは、02年度に実施した同様の調査から2年後の現況を調べるためのものである。なお、調査は、前回と同様、環境事業団『環境NGO総覧』、環境省『環境白書』、内閣府によるNPO法人格取得状況を中心に用いた。 2.インテンシブな調査として、地域を限定して、環境事業団『環境NGO総覧』掲載のNGO・NPOに対して全数調査を実施した。都市化と自然地域が混在する埼玉県143団体、自然が多い長野県97団体についてアンケート用紙を郵送し、それぞれ59団体、43団体から回答を得た。 3.前記調査から、環境行政の参加やパートナーシップの例が増えつつあるものの、行政に対する不満はかなり高い割合を示している。最終的には、環境団体訴訟の必要性を示唆しているが、現実には、埼玉県、長野県調査では、環境訴訟への関与は6団体(当事者1、証人1、支援3、原告団への所属1)で少数にとどまっている。 4.比較の材料としてフランス環境法の推移を調査した。フランスでは、すでに環境団体訴訟が存在しているが、近年、環境権が環境法典に規定され(110-2条)、環境法の原則として、予防原則、汚染者負担原則、防止原則、参加原則(情報への参加と意思決定への参加)などが宣言されている(110-1条)が、憲法的規定として環境憲章案が成立し、前記原則もまた、環境憲章に導入されている(国民投票待ち)。 5.以上から、環境権を立法化するか、環境団体訴訟の導入が検討されるべきである。
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