離婚訴訟とそれに付随する離婚効果事件(財産分与、未成年子の養育費、親権者指定を中心とする乙類審判事項)の統合的処理につき、ドイツ法に照準をあてその要件と効果を詳細に分析した。また、前年度にドイツで実施した家庭裁判所および関係機関での調査結果をもとに、離婚裁判手続における一体的処理の実効性についても検証した。 ドイツは1976年に積極的破綻主義を導入し、空洞化した婚姻の解消を容易化するとともに、離婚手続面では、一定の場合に、離婚後扶養、住居と家具に関する権利関係の調整、子の扶養・監護、面接交渉に関する合意を離婚申立書に記載し裁判所に提示させることで、離婚の迅速な成立と付随事項の一括的解決を図る等の法改正を行った。さらに、婚姻財産や年金権の清算を離婚裁判と結合することにより、同一の裁判官による総合的判断を可能にし、そのための具体的処理基準を民法典中に詳細に規定している。離婚に伴う財産上の措置に関するドイツのこの多面的な実体・手続規範は、内容の複雑さにもかかわらず裁判規範として社会に浸透し、相互に関連性を保ちながら、全体として離婚による経済的弱者の発生を防ぐよう機能していると評価することができる。 わが国においても人事訴訟の移管により、離婚事件処理の迅速性と内容の妥当性確保が家庭裁判所の最重要課題となることが予想される。ドイツ法の考察による知見をもとに、従来の調停・審判例から導出される配偶者の寄与と子供の福祉という一般条項的考慮事由を具体的判断基準へと転化し、実体・手続両規範のさらなる融合的運用を図ることで、この問題に答えることができると考える。
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