本年度は、2004年2月に、海外研究協力者であるウィーン大学法学部のヴォルフガング・マーツァール教授に来日してもらい、研究代表者及び分担者に、若干名の労働法及び社会保障法研究者が加わった研究会を開催し、個人事業者の法的保護の問題について比較法的な検討を行った。今回は、とくに解雇制限保護の適用範囲に関して議論を行った。オーストリア及びヨーロッパにおける考え方を検討するとともに、わが国においてはじめて一般的解雇制限規定が導入されたことによる影響などに関しても、議論を行った。ヨーロッパにおける議論状況は、労働法や社会保障法規範の段階的適用を積極的に評価する方向にあり、こうした傾向自体は、わが国においても肯定的にとらえるべきであろうと考えられるが、今回とりあげた解雇制限規制などについては、どの範囲の者に適用すべきか、また、解雇制限規制内部における段階的ルールの形成などが考えられるのか等、なお検討すべき問題が数多く発見された。今後は、こうした問題点について、その解決を見いだすことが課題である。 ドイツにおける状況を調査するために、研究分担者である西村教授がドイツに出張した。出張時期が3月であったため、成果報告は完成していないが、この調査においてはとりわけ社会保障法関係に関するドイツの実情を調査するとともに、ドイツにおける社会保障法研究者と議論を行い、ドイツあるいはヨーロッパにおける議論状況の把握を行った。 なお、年度の前半においては、昨年度に引き続き、わが国における実態調査を行い、とりわけ労働基準行政の関係者から聞き取り調査を行った。
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