本年度は、過去2年間の研究成果を踏まえて、総括的な議論を行うとともに、わが国の実態や海外の状況に関する補充的な調査を行った。また、千葉大学の皆川宏之助教授や院生らの協力を得て、海外における労働者概念の理解について再検討を行い、議論の基礎を固めた。具体的には以下のとおりである。 2004年9月には、分担者の西村教授がオーストリアに出張し、ウィーン大学法学部のマーツァール教授の協力を得て、オーストリアにおける実情に関して補充的な調査を行うとともに、両国における問題への対応に関して議論を行った。 わが国の実情に関しては、可能であれば大量観察的な手法による調査を実施したいと考え、その方法を模索したが、交付された補助金の範囲内において実施することは不可能と考え、今年度も補足的なヒヤリングを行った。ヒヤリング対象として、多くの労働相談が持ち込まれる京都労働局の担当部署を選んだ。 総括的な議論を行うために、分担者である西村教授と代表者である村中、及び、別途経費により来日したウィーン大学のマーツァール教授の3人で、2005年2月に会合をもち議論を行った。この議論においては、院生らの協力により得られた労働者概念をめぐる各国の対応に関する知見も基礎にしつつ、独立自営業者の数が増加しているという事実は否定できないこと、その形態がきわめて多様であること、事業者の意識も多様で、法規制に関する考え方には差があることなどを確認するとともに、自ら労務を提供する者を広くカバーする概念をたてることの可否を検討した。
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