本年度は研究の締めくくりの年であり、論文としては、労働契約の終了の規制のあり方と就労請求権を論じた「準解雇の法理(五・完)」広島法学28巻1号、労働契約法のあり方と基本構造を探った「労働契約法としての労働基準法(一)、(二)、(三)」広島法学28巻2号・3号・4号、労働組合の団結強化と職場代表機能の強化の新たな法的方向性を探った「ユニオン・ショップ」労働法の争点(第3版)、「組織強制の法理(1)」広島法科大学院論集1号(以上の論文については後掲研究発表の欄に記載)、就業規則法理の問題点を指摘し今後の集団的労働条件決定システムのあり方を考察した「就業規則」法学セミナー「2005年2月号、成果主義賃金をめぐるフランスの判例研究を行った「使用者による労働者の能力評価・格付けの適法性要件」労働法律旬報1579号などを執筆した。また、平成16年8月に松下電器産業(株)に人事制度・賃金制度・高齢者雇用政策に関して、同年9月に大阪府に地方自治体の雇用・労働政策に関して、西日本旅客鉄道(株)に人事制度・賃金制度・高齢者雇用政策に関して、本研究のテーマに即して聞き取り調査を行った。そして、研究会での研究発表としては、平成16年7月に比較労働法研究会において「準解雇の法理」を、同年11月に学会報告勉強会において「労働契約法としての労働基準法」をそれぞれ発表し議論を行った。 以上の今年度の成果とそれ以前の研究成果を踏まえつつ、3年間の研究のまとめとして、現在、報告書を執筆中であり、具体的には、雇用社会・労働市場の変化を踏まえつつ雇用形態の多様化・複雑化、労働条件の個別化、労働契約の意義の増大などの新たな傾向に適合した21世紀の労働法のあり方を総合的に探り、労働法の新たなパラダイムを提示する作業を行っている。
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