1.調査実績 2003年6月1日〜14日に、国際労働機関(ILO)の総会および「雇用関係の範囲」委員会に参加・傍聴した。また、国内では、あいおい損保代理店、人材派遣会社各社(ビッグ・アビリティ、アデコ、リクルート・スタッフィング、マンパワージャパン、パソナ、テンプスタッフ)の法務担当者および人材派遣協会、(社)全国労働基準関係団体連合会、出版ネッツを取材した。また、諸外国の法制度調査のために、文献リサーチを行った。 2.研究実績 労務サービス契約を(1)業務委託契約、(2)業務請負契約の二種類に分け、それぞれを以下のように定義した。 業務委託とは、ある個人が他の企業(ユーザー)から委託を受けて、自営の形式で、委託者の指示の下に委託された業務を遂行し、これに対して報酬を得ることを意味し、この目的を達成するために当事者の間で結ぶ一個または複数の契約を業務委託契約という。業務委託の下で働く就業者を「委託労働者」と呼ぶ。 業務請負とは、ある企業(労務請負企業)が他の企業(ユーザー)との契約に基づいて、その債務を履行するために労働者を提供して、ユーザーの指示の下に委託された業務に従事させ、これに対して報酬を得ることをいう。ユーザーの指示の下に働く労働者を「請負労働者」と呼ぶ。ここでは、労務請負企業とユーザーとの間の契約を業務請負契約という。 法的課題として、委託労働者については、その労働者性が認められる場合と認められない場合に分け、後者については、保護されるべき委託労働者を「契約労働者」と定義し、労災保険法など労働法の一部を契約労働者に拡大適用する立法的解決が必要であること、また、現行法の枠内において業務委託契約への労働契約ルールの類推適用の可能性を検討した。 業務請負については、労働者派遣・労働者供給との区分基準を明らかにし、ユーザーと請負労働者との間の黙示的労働契約成立の判断基準を検討した。
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