本研究は、マネーロンダリングの国際的な規制に関する近時の動向について検討するとともに、これまでのわが国の法運用を検討し、今後わが国でどのような立法が必要となるかについての研究を行おうとするものである。本研究の期間は2カ年の予定であり、本年度は、マネーロンダリング規制に関する近時の動きを検討するため、以下のような研究を行った。(1)わが国のマネーロンダリング罪の適用例について判例等の情報を収集し、その検討を行った(2)近時のマネーロンダリング規制に関する国際的な動きを検討するため、金融活動作業部会やEUにおける最近の議論や指令に関する資料を収集し、また、これらの動きに対応した各国の動きについても資料の収集を行い、これらの検討を行った。その際には、特にいわゆるゲートキーパー問題に注意を払うとともに、マネーロンダリング規制と深い関連を有するテロ対策資金規制の問題についても検討を行うようにした。(3)国際的なマネーロンダリング規制の動きと各国の対応の在り方について、各国の刑事法学者と意見や情報の交換を行った。(4)国際的なマネーロンダリング規制を理解するうえで不可欠な国際刑法の知識を深めるための研究を行った。以上の研究の一環として、発表した規制緩和と刑事法の関係に関する論文の中で、近時のマネーロンダリング規制を、規制緩和の背景にある経済のグローバル化に伴って求められるようになった市場の国際基準として位置づけることを試みた。また、(4)の国際刑法の研究の成果の一部を近く発表する予定である。
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