本研究は、マネーロンダリング規制の新たな展開を検討することで、わが国における将来のマネーロンダリング規制のあり方について検討しようとするものである。 わが国のマネーロンダリング規制は、1988年の麻薬新条約を締結するために1991年に制定された麻薬特例法に始まるが、その後、マネーロンダリング規制の範囲は、組織的犯罪処罰法によって主要な犯罪一般に拡大され、国連の国際組織犯罪防止条約によってその範囲をさらに拡大することが求めれている。さらに、マネーロンダリング規制の範囲は、アメリカにおける9・11テロを受けて、国際的にテロ資金の規正にまで拡大されるようになり、わが国でも新たな立法が行われた。このようなマネーロンダリング規制の動向においては、FATFの勧告が特に重要な意味を持っており、FATFの新しい勧告の実施に伴い、わが国においても、新たな対応が求められている。具体的には、本人確認義務、記録保管義務、疑わしい取引の届出義務などを特定非金融業者や職業専門家に拡大することが必要である。その際には、弁護士の守秘義務に留意するとともに、新たな行政制裁制度を導入することも検討されるべきである。 マネーロンダリング規制においては、没収・追徴の活用が重要であり、その範囲については判例で明らかにされつつある。しかし、組織的犯罪処罰法には、犯罪被害財産の没収・追徴を認めていないという欠陥があり、この点を是正する改正が早急に必要である。
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