本年は、フランスの刑事和解(刑事調停<mediation penale>及び刑事示談<composition penale>)について研究するため、日本でフランス語論文やインターネットを通じて情報収集し、2002年9月及び2003年2月には、フランスでの現地調査を行った。 フランスでは、1970年代から軽微犯罪の増加及び犯罪被害者保護の必要性に対する意識の高まりを受け、裁判所の負担減と迅速な被害者の満足獲得とが一致する方策として、刑事和解・調停(mediation penale)が1980年代から各地で試験的に行われていたが、刑事訴訟法を大幅に改正した1993年1月4日の法律第2号により、本制度が正式(法的)に導入された。 第1回現地調査では、グルノーブル司法の家(Maison de Justice)やパリ郊外ボビニー裁判所を訪問し、刑事和解を実際に見学し、調停人にインタビューを行った。また、リヨン第2大学人文科学研究所やパリ第2大学裁判外紛争仲裁センターを訪問し、フランスの裁判外紛争仲裁(ADR)専門家であるボナフェ=シュミット教授、ゴズィー教授、フシャール教授、ジャロソン教授等にインタビューを行い、膨大な資料も収集することができた。第2回現地調査では、パリ郊外ボビニー裁判所及びナンテール裁判所、リヨン司法の家にて、刑事和解及び少年刑事調停を実際に見学し、調停人にインタビューを行い、さらに理解を深めることができた。新しい資料も追加された。今回は、特にリヨン検事局と市民による裁判外紛争センターを両方訪問することにより、両者間に役割分担をめぐるある種の確執があることが分かった。 これらの研究成果の一部は、既に簡単に紹介したが、膨大な資料を分析し、まとめる作業が残っており、平成15年度の研究に引き継ぐ予定である。
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