グローバルな冷戦が終焉したにもかかわらず、なぜ、朝鮮半島における冷戦が終焉しないのかに答えることが、本研究の目的である。そのために、次の2つの作業を並行して進めた。第一に、朝鮮半島における冷戦の起源に対する再検討である。朝鮮戦争時の米軍による北朝鮮捕獲文書集である韓国国史編纂委員会『北韓関係資料集』やウッドローウィルソンセンターの冷戦国際史プロジェクトの研究文献および文書(インターネットによるダウンロード)などを分析することで、朝鮮戦争をめぐる北朝鮮と中ソとの関係を明らかにし、朝鮮半島冷戦が米ソ関係によって規定されながらも、逆に米ソ関係を巻き込んでいく力学を解明した。第二に、1970年前後の米中和解に見られた東北アジアにおける冷戦の緩和が朝鮮半島冷戦にどのような影響を及ぼしたのかを分析する作業である。この作業に関しては、その前提として、1964年から1968年までのアメリカ国務省の外交文書や1960年代および1970年代の韓国国会図書館所蔵の国会本会議議事録および常任委員会議事録などを、インターネットを通してダウンロードし、それを分析する作業を行った。本格的な70年代の外交文書の調査分析作業は、ハーバード大学のイエンチン研究所での在外研究のために中断されたが、機会をみて取り組む予定である。使用した科研費は、そうした膨大な資料を高速にダウンロードすることができるPCの購入、さらに、膨大な量の資料を保存する周辺機器の購入、さらに、韓国語の資料を検索するための韓国語を含む多言語ソフトの購入などに充てた。
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