研究課題
基盤研究(C)
当初の研究計画は、省級の直轄市である北京市について、市→県・区→街道・郷鎮→居民委員会・村民委員会という縦の政府間関係と同時に、北京市郊外に位置する天津市と河北省7市と北京市との横の政府間関係を検討し、最終的に総合的な研究を行う予定であった。実際に、居民委員会・村民委員会のレヴェルから研究に着手したところ、居民委員会の統合・合併と社区居民委員会の成立時期に当たっており、また、村民委員会も1998年の組織法施行以降、さらに大きな変化に直面していたために、研究の重点は基層の分析にシフトされることとなった。全国的な変化を視野に入れ、また、理論的な動向も踏まえながら、北京市を主要なフィールドとしたが、研究成果は主に2つの領域に及ぶこととなった。すなわち、1.都市部における街道弁事処(区の派出機構)と居民委員会の関係、2.農村部における、郷鎮政府と村民委員会との関係とである。居民委員会、村民委員会ともに大衆自治組織であって、政府ではないというのが中国の公式見解だが、そこには事実上の政府間関係を見ることができる。研究成果である2論文、2研究ノートでは、北京市の都市部の街道弁事処・居民委員会、郊外・農村地域の郷鎮政府・村民委員会を中心に、その歴史・沿革、変化、現状について分析を行ってある。都市部での変化は、当初は、改革開放の進行とともに進んだ市場化に対応するためのものであったが、1990年代を通じた単位制の動揺、高齢化の進行、外来流動人口の急増、郊外型新興住宅地の建設などの変化をふまえて、より抜本的な再編が志向された。その目指すところは、2000年11月の「民政部の全国に都市社区建設を推進することに関する意見」に見ることができる。北京市では2000年から2001年にかけて、「社区体制改革」が行われ、居民委員の大規模な統合・合併が行われた。農村部での変化は、基本的には、1987年の村民委員会組織法・試行法、1998年の村民委員会組織法の延長線上にあり、村民の直接選挙による民意を背景として、党支部委員会や郷鎮政府に対して、村民委員会が発言力を増していくプロセスであった。このプロセスは当然、さまざまな軋轢を生んだが、2002年7月の中共中央・国務院の「村民委員会選挙をさらにいっそうよく成し遂げることに関する通知」以降は、党支部書記による村民委員会主任の兼務を奨励し軋轢を和らげる方向性を志向しているように見える。
すべて 2006 2003
すべて 雑誌論文 (8件)
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