研究概要 |
本年度は、旧ユーゴスラヴィア紛争後の国家建設を、とりわけ平和構築と民主化過程における国際機関の役割、機関相互の連携体制の実態と問題点について研究をすすめた。その際にボスニアとコソヴォにおける国際機関の暫定統治体制を比較した。デイトン合意後8年になりながら、NATOの治安部隊の存続、CSCE、EU,国連などによる市民社会の構築などの点で、ボスニア社会の住民による主体的参加が軌道にのらないボスニア。また、アルバニア人とセルビア人の激しい民族対立が依然として継続するコソヴォでは、暫定統治が事実上の「保護領」体制のようになってきている点に関心をむけて研究を進めた。 その過程で、民主化と平和構築の復興プロセスで各国際機関のやくわりの不明確さや競合、縄張り争いなど、連携体制における問題点が浮き彫りにされた。旧ユーゴスラヴィア紛争後のバルカンのガヴァナンスについては、Japanese Journal of Political Science誌に論考Regional Governance : Lessons from European Involvement in Yugoslav Conflictsを発表した。また、国際機関、国際社会の旧ユーゴスラヴィアへの介入の特徴をまとめた、論考Changes in 'Intervention Theory' and the Fragmentation of Yugoslaviaを共著の形でザグレブから出版した。また、ボスニアのコニッチでの国際シンポジウムDemocracy and Human Rights in Multiethnic Societiesでは"Humanitarian Intervention and American Foreign Policy"の報告をおこなった。さらに、国際法学会主催の国際シンポジウムでは「国家建設と国際機関」について旧ユーゴスラヴィアを事例に研究報告をした。
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