研究課題/領域番号 |
14520100
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
薮野 祐三 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (10047730)
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研究分担者 |
出水 薫 九州大学, 大学院・法学研究院, 助教授 (20294861)
石川 捷治 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (30047740)
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キーワード | 地方分権 / 分権化 / ベーシック・ヒューマン・ニーズ / 介護保険 / 市町村合併 |
研究概要 |
アジアの地方分権に関する研究として、初年度はとりわけタイ、シンガポール、韓国、ならびに日本に焦点を絞り、その現状について、分析を加えた。比較する場合、相対的にある特定の国の分権化の状況を基礎とする方法が、比較研究への寄与が高いと判断し、日本をまず機軸とした。日本の場合、地方分権論議は市町村合併と介護保険を中心に論議がすすんでいる。自治体の規模をどのように設定するのか、さらに権限(この場合、具体的には介護保険)をどのように実施するのかは、「地方自治は民主主義の学校」と呼ばれるだけに、やはり住民サービスの根幹に関わる問題となっている。 とりわけ、現在までの政治学では国家規模と国家レベルにおける民主化問題が論議されてきたが、地方分権を分析の対象とした場合、権利、義務などの政治的要求よりも、治安、教育、保健、衛生、水道などの直接住民生活要求が前面的に課題として表れてくる。 タイでは、自治体の規模が問題となり始めているのに対して、シンガポールでは自治体の権限が、韓国では国家対自治体の権限分割がそれぞれ具体的な課題として、見てきた。 従来、民主主義は議会、政党、選挙などの政治システムを機軸として論議を積み重ねてきたが、アジアの分権を見た場合、政治のシステム的完成度ではなく、住民の生活要求が課題となって、民主主義が論議されている現状がつぶさに見て取れる。一般にBHNと呼ばれるが、basic human needの略であるBHNの充足こそ、新たな民主主義の基礎となるべき点が、個々の国によって程度の相違はあれ、個別的に求め始められている状況が明らかとなった。
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