研究概要 |
95年以降の社会政策・経済政策をめぐる政策選択肢について,比較政治学および欧州統合に関する先行研究の整理が第1の研究課題であった。前者については,特に権力資源論の妥当性について以下のような知見を得た。福祉国家形成・発展期とは異なり,その再編期にあっては,権力資源アプローチの有効性が減じていること,政党の政権掌握という要因の説明力も低下するという研究が現れている。フランスでは労働組合の組織率の低下が著しく,一般的には,その交渉力の低下と交渉機構の下位レベルへの分権化の傾向が現れているということができる。このことと,「代表・委任によるストライキ」との相関関係を解明することの重要性が確認できた。欧州統合に関しては,欧州レベルでの政策の統一性の追求と各国ごとの多様性の追求との関係が理論的・実践的課題となっていること,このことがガヴァナンスの問題としてEUでは認識されていることが明らかになった。2000年3月にリスボンで開催された欧州理事会において開始されたリスボン戦略において,各国ごとの政策多様性を追求する手段として「開かれた調整方式」が注目されているが,この手段の多用について欧州委員会は若干懐疑的であるように思われる。同戦略の目標設定において,イギリス・スペインが主導権を握ったことは,フランスなどの大陸諸国の政策目標との相剋を生むと考えうる。方法および政策目標双方について,国民国家レベルと欧州レベルとの関係を探るという課題がより明確になった。 第2の研究課題,すなわち政策デザインについてはEUレベルについて十分な情報収集ができたが,フランスについてはまだ不十分なままにとどまった。 したがって,第3の課題である面接調査の質問項目作成については,EUレベルについてはかなり固まってきたものの,フランスについてはさらに詰めなければならない項目が残された。
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