研究概要 |
本年度の研究実施計画の第一にかかげた,フランスの各アクターの政策デザインについての資料収集は順調に進んだ。とくに,労働総同盟失業者委員会,失業者組合,全国失業者・不安定労働者運動,雇用・情報・連帯のためのアソシエーション,失業に対抗してともに行動を!(AC!)などの失業者組織についての知見が広がった。また,社会保障改革,普遍的所得保障にかんする対立について整理することができた。しかし,当初予定していた各アクターに対する面接調査は実施することができなかったので来年度の課題としたい。 第二の権力資源論・社会運動論にかんする検討については,「代表・委任によるストライキ」という仮説の有効性は確認できた。しかし「代表」概念にかんする根本的・原理的・理論的再検討の必要性を認識するにいたった。この点は,ロワール応用社会学研究センターにおける研究打ち合わせでも確認することができた。 第三の課題であるグローバル化と欧州統合の進展にかんしては,「新しい欧州経済社会モデルとガヴァナンス-グローバル化のなかの欧州統合-」と題する小論をまとめた。この小論では,EUにおけるガヴァナンス改革の動向と,なかでも社会問題・雇用問題についてEUがどのような政策選択肢を提示しているのかを整理した。EUはグローバル化を奇貨とし,競争力強化と社会的結束を積極的に結びつけ,完全雇用のための条件を回復し,リージョンとしての欧州の結束を確固としたものにすることをめざそうとしている。従来は,各国政府が排他的に政策対応するとされてきたこれらの政策領域についてもEUがより積極的な役割を果たそうとしているおり,そのことが,各国の多様性尊重を許すのかを再び検討する必要のあることが明らかとなった。また,この点に関してフランス国際関係研究所における聞き取り調査において確認することもできた。
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