本年度は、海外調査を中心にほぼ計画通りの調査を進めた。すなわち、南洋群島帰還者による「全国南洋会」テニアン大会に同行し、サイパン島、テニアン島におけるつぎのような調査を実施した。すなわち、文書史料の裏づけをとりながら日本人および現地住民の聴き取り、旧日本人市街地や開拓地の戦前、戦後に関する現場調査、戦跡調査を行い、さらに文書史料の収集をした。その際、マリアナ自治領立歴史保存センター及びミュージアム(日本統治時代の史料を常設展示)の調査員との情報交換の機会を得、今後も協力してゆくこととなった。一方、アメリカでは、議会図書館が所蔵する南洋群島関係史料に関する図書館側のリスト化、マイクロ化に引き続き協力しつつ、これら史料の複写を終え、さらに国立公文書館が所蔵する米軍占領前後の南洋群島関係史料について下調査を行った(本調査については、複写費用のみ研究費から捻出)。史料調査の成果は論文化され『歴史学研究』の7月号に掲載される予定である。しかし、海外出張費用の制約からパラオ調査は実施できなかった。つまりパラオ、ポナペに関する調査は、国内諸機関に所蔵されている史料の調査、整理が中心となり、また聴き取りも計画通りには進めることができなかったので、次年度の計画に継続したい。国内での聴き取りは、沖縄県および福島県で主に南洋興発(株)関係者から調査を行ったほか、東京近辺在住者からも教育、職業について調査を行った。とくに八丈島出身者からの聴き取りが進められた。 以上の史料の分析については、植民地経済史研究者のインフォーマルな会合で報告を行った。その結果、次年度の学会報告(日本移民学会大会)が決定した。
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