研究概要 |
今年度は、行政機関が危機管理をどう定義するか、そのことに相当なエネルギーを割いた。はじめに外国の資料を検討し、それに合わせて日本でこの問題がどう扱われてきたかを調査した。結果は、従来から危機管理ではすでに相当な実績をもつアメリカでは、危機管理は「事前準備」、「応答性」、「復旧性」、それに「減災性」の4つの課題に集約されてきている。それに対して日本では、危機管理は企業経営のリスクマネジメントにも使われる。表現が不足し、定義からしてきわめて未分化というのが、わが国の現状である。 アメリカの自治体は、危機管理ではもっとも先進的な機関の一つである。多くのところが、つの命題を基本に危機対策を考えている。2002年7月に現地調査を実施したカリフォルニア州オークランド市の事例を引くと、「事前準備」に関して年に数回、「ドリル」と称する予告なしの抜き打ちの危機管理訓練を行なっている。ただ、今後のことになると、自然災害だけではなく、テロなど政治性の高い人為的な事件も視野に入れなければならない。 一方、日本については、危機管理という表現そのものに関して、定義が定着していないのが現状である。これは多分にマスコミにも責任がある。日本では、危機管理という表現がいろいろな場面に登場する結果、危機管理には「おどろおどろしい」や「おおげさ」というイメージがつきまとう。それをどう是正していくか、それがこれからの課題である。 今年度は、Managing Crises (Springfield, IL : Charles C. Thomas)が刊行され、拙文、"Preparing for the Inevitable : Japan's Ongoing Search for Best Crisis Management Practices"がその第19章に収載された。
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