この「不測事態に対応する行政管理システム確立」を主題とした研究は、2000年4月を起点にその後、2003年3月まで3ヵ年つづいた。調査では、焦点を自治体を絞ることにし、地方団体が不測の事態の発生に直面して、どのような対策をとるべきかを検討することに時間をかけた。当初から危機管理と総称される施策のうち、ハードな側面はとり上げないことにしてきた。研究の対象をソフト面に限定し、組織や人事、それに権限などの課題に格段の関心を払った。 そうした基本的な方針にしたがい、研究では自治体の危機管理体制の現状を把握することにつとめた。それを効率よく進めるため、ここでは特定の自治体に焦点を合わせ、3年近くにわたっていくつかの自治体の危機管理体制を検討してきた。結果、なかには不測事態への準備が不十分なところや、対応策がほとんどない自治体のあることが判明した。この調査結果は、2005年3月に刊行した『危機管理と行政』にくわしく説明している。 その後、研究の窓口を拡大することを企図し、日本都市センターが主宰する「安全と安心のまちづくり」を検討する研究会にくわった。同時に消防庁の「消防の安全活動」を考える委員会にも参加することにした。こうした経験から、いくつかの知見が得られたが、一つの成果は日本都市センターが発行した『安全・安心なまちづくりへの政策提言』にまとめている。また、消防庁での会議に関係したことから、S-KYTシステムと呼ばれる危機管理の意識向上を図る方法を知る機会に恵まれた。その後、これを行政職員の危機認知度を増す施策につなげることを考えた。内容は『危機管理と行政』に記したとおりである。 研究の最終年度では、危機管理を国際的な枠組みでとらえることに焦点を合わせた。オイルタンカーからの石油流出事故や、難波船の漂着など事故が多発している。それを自治体と国際条約との文脈で検討することにつとめた。
|