1.2001年度末に公表した論文、「アンシァン・レジームにおける国家と宗教」(『立教法学』61。2002年3月)の中で、アンシァン・レジーム期フランスにおいて、宗教をめぐる議論が国家社会の構造変化と相応しながらどのように変化していったかを概括的に論じた。今年度は、17世紀から18世紀半ばにかけての時期に焦点を絞り、この論文で提示した諸論点を深める方向で研究を進めた。 2.具体的には、まず第一に、啓蒙主義の成立に重要な役割を果たしたピエール・ベールに関する文献資料の蒐集と整理を行なった。ベールの「文芸共和国」の理念は、ルネサンス期のユマニストの伝統を受け継ぎ、政治と宗教の関係、とりわけ寛容の問題を検討するのに重要である. 3.第二に、ヴォルテール関係の文献調査を行なった。ヴォルテールについては膨大な文献があり、寛容の問題に関してもカラス事件を中心にした研究は数多い。今年度については、むしろそれ以前の著作における宗教の位置付けを検討することを主眼とした。カラス事件に関しては、来年度に集中的に行なうことにしたい。 4.以上の2点について、文献を整理してデータベース化する作業を、アルバイトに依託して行なっている。 5.文献整理と併行してテクストの分析、解釈を進めているが、宗教意識の分析にあたっては伝統的にフランス文学の領域で蓄積されてきた研究成果の利用が不可欠であるため、フランス文学研究者へのインタヴューも数回行なった。おなじテクストの解釈にしても、文学研究での扱い方と政治思想史研究での扱い方には違いがあるため、多くの有益な示唆を得ることができた。 5.近年フランスにおいてサドの再評価の動きが活発である。政治思想史においては正面から扱われた来なかったが、宗教と政治の問題を考えるにあたってはサドを視野に入れる必要があり、積極的に文献蒐集を始めている。
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