研究概要 |
オークション理論モデルのほとんどは、準線型選好を用いています。本年度は、選好の準線型性を仮定することの妥当性について特に研究しました。 x財とy財の二財に関する通常の条件(連続性、単調性、凸性)を満たす効用関数を考えます。ただし、y財をヒックスの合成財、x財を正常財とします。このとき、y財が消費されるならば、x財の固定された消費量に対するWillingness to Payが有界であることが、この効用関数が漸次的に準線型選好になる必要十分条件であることがわかりました。したがって、他の財の消費量が十分に多いならば、正常財に対して(局所的に)選好の準線型性を仮定することを、正当化できることになります。さらに、(非分離関数を含む)ある種のスムースな効用関数について、その極限値となっている準線型効用関数を計算しました。このアプローチのメリットは、非線形な選好を伴う市場が与えられたとき、ある財の賦存量を増加させる操作による極限値として、その市場における選好の準線型性を仮定できるということです。それゆえ、選好の準線型性が仮定されている市場について、例えば競争均衡の唯一性が示されたならば、その市場に収束する非線形な選好を伴う市場についても、漸次的に同様な結果が成立するものと考えることができます。 以上の研究結果を、"Asymptotically Quasi-linear Utility Function"としてまとめ、海外のコンファレンス(Advances in Game Theory and related Topics, June 23-25, 2002, Tilburg University, The Netherland)で発表しました。
|