研究概要 |
三宅(研究代表者)は多数財オークション理論が準拠する部分均衡分析のフレームワークに対してその妥当性の検討をおこなった。具体的には、従来の多数財オークション理論が大前提としていた「財または商品についての入札者の評価が貨幣的な数値として与えられる」という部分均衡モデルの仮定が、通常の正常財の仮定と両立する場合はいかなる場合であるかを明らかにした。この問題の本質的重要性は、部分均衡分析で用いられる「消費者余剰(貨幣的な数値)」の評価基準が多数財オークション理論においても利用可能であり、その評価基準を用いて複数のオークションルールおよびその形態(英国型、オランダ型など)に対する政策的評価をすることが妥当であるかについての判断を行なうことにある。結論として、正常財の仮定のもとで、オークション参加者の効用関数および初期所得に対して、「消費者余剰」の評価基準が適応可能であることの必要かつ十分条件を求めることができた。この研究成果は、三宅の単著論文として、国際学術雑誌: Mathematical Social Sciences(出版社: Elsevier,出版国:オランダ)に掲載予定である。これにより、多数財オークションの均衡の計算についても、それが非常に単純な計算により可能であることが言える。さらに、「消費者余剰」は、多数財オークション理論だけでなく、部分均衡モデル全般にわたって用いられている評価基準であるので、これから、他の分野での応用が検討されるものと思われる。 また、芹澤(研究分担者)は香港科学技術大学のChew Soo Hong教授と共同で、多数財オークションの公理的特徴付けの研究を行なった。これらの成果は今のところワーキングペーパーの段階にあるが、近い将来、明確な形で研究成果が得られるものと期待される。
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