研究概要 |
開発権移転(TDR)の経済分析の視点は2つある。1つは土地利用の効率性に焦点を合わせたものである。もう1つは対象地域内の一部の地区に関して,外部性が顕著な故に開発が抑制されることから生ずる土地所有者間の分配の不公平性についてである。平成14年度はTDRの外部性規制の適用例を念頭において,TDRの供給者である開発規制地区の土地所有者(ディベロッパー)がTDR市場で独占的に行動するモデルを構築し,TDR制度を効率性と所持分配の公平性の観点から評価する分析を行った。特に環境保全の外部性の大きさがTDR制度の評価にどのように影響を与えるかを分析する。さらに開発単位面積当り必要TDR量などのTDR市場環境が効率性,公平性に関するTDR制度の機能におよぼす影響を分析する。分析は単純なモデルによる数値シミュレーションによる。その結果,TDR市場の創設はゾーニング規制の場合に比べて効率性,公平性とも大幅に改善できることが示された。特に開発規制地区の開発によって影響をうける外部性が大きい場合には,TDR制度の効率性は社会的最適に近い水準になる。TDR市場の環境に影響を与える開発権変換係数の値によって,TDR制度の効率性,公平性の水準が変化する。したがって都市政府は,この係数を適切に決定することによって,TDR制度の機能をより効果的に働かせることが可能である。
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