研究概要 |
今年度は、(1)ロシア金融部門および資源部門のモデル化、(2)世銀・ロシア縦断モニター調査(RLMS)データによる家計貯蓄行動の分析、(3)家計貯蓄行動の不足情報解消のためのアンケート調査実施を計画した。 (1)は中村が担当した。金融部門のモデル化は、なお金融制度、金融機関行動、および次の(2)の事情により不確定要素が大きくプロトタイプ・モデルの作成には至らなかった。これらの問題点については一橋大学経済研究所において報告した。資源部門のモデル化については基本的に終了し、専修大学、一橋大学経済研究所で報告するとともに、モデル化の技術面について論文を発表した。分析結果については、英文論文を準備中である。 (2),(3)は日本学術振興会フェローとして本年度本学に滞在したロシア高等経済大学・シャシュノフ教授大との共同研究としておこなった。(2)について、我々は、調査表設計の不備によりデータ内部の整合性の欠如、必要情報の欠落がありRLMSデータを分析的利用することはできないと結論せざるをえなかった。RLMSデータに期待し、その解析に多大の時間を投下したが、リターンは小さかった。この点についてはシャシュノフ教授が一連の論文で発表している。中村もRLMSの改善のためにも論文として発表する予定である。(3)については、当初はRLMSを補完する位置づけだったが、(2)の事情によりRLMSを代替する役割を担うことになった。(2)の結果を考慮してアンケート表を設計し、ロシアの2地域で計500サンプルのパイロット調査を実施した。ロシアにも存在しない家計貯蓄行動についてのデータを得ることができ、興味深い調査結果を得た。その最初の成果はすでに北海道大学スラブ研究センターで報告済みである。しかし、本格的な分析をおこなうには、研究計画のとおり調査を継続し調査数を増大することが決定的に重要である。
|