本年度は、地域産業構造の変化と技術移転・技術進歩の効果の相関を推計するための基礎的分析ならびに基礎となるデータの収集・整理を行った。実際には九州各県、九州全域産業連関表、工業統計表ならびに県民所得勘定、さらにドイツ各州の産業連関表、国民所得勘定などを収集し、その分析を進めた。また産業構造の実態を把握するために既存の研究の調査、大分県を始めとする九州各県の実態調査、比較研究の基礎データを得るためにドイツならびに環太平洋との関連でオーストラリアでの産業についての調査を実施した。 とくに今回、収集・整理した大分県の県民所得勘定、事業所統計、産業連関分析表、工業統計のデータをベースにして、「大分県製造業の構造変化と技術進歩率の計測(昭和60年〜平成7年)」について検討し、その研究成果を大分大学経済論集に掲載した。予想されたことではあるが、この予備的な研究では、大分県製造業が基礎素材型中心から加工組立型にシフトする過程で電気、精密機械製造業における技術移転・技術進歩による大幅な生産性の向上があったことが明らかとなった。 この基礎的な検討をベースにして、技術移転・技術進歩があった場合に、それが県内産業の生産額や県民所得にどのような波及効果を及ぼすかなどの産業連関分析や時系列分析の側面からみた検討はこれからの課題となる。
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