本研究の目的は技術移転が地域経済においてどのように産業構造の変化をもたらしているか、また、それが地域経済の成長・発展にどの程度寄与しているか等の点について、実証的な分析をすることにある。 14年度は準備的な研究として、大分県の県民所得勘定、事業所統計、産業連関分析表、工業統計のデータをベースにした「大分県製造業の構造変化と技術進歩率の計測(昭和60年〜平成7年)」について検討し、その実証研究の成果を大分大学経済論集に掲載した。この研究では、大分県における製造業が基礎素材型中心から加工組立型にシフトする過程で、技術移転・技術進歩による大幅な生産性の向上が電気・精密機械製造業においてあったことを明らかにした。 15年度は、EU諸国における地域経済の発展の状況を調べるために、ドイツのパダボーン、デュッセルドルフ、イタリアのミラノ等の各都市で、ヒアリングを行なうとともに、中小企業群の現状を視察した。とくに、パダボーン大学経済学部ではヨーロッパの地域産業について意見交換する場を持ち、産業集積のクラスター化が技術移転を促進している大きな要因となっている状況を知ることができた。 こうした調査や14年度の研究を踏まえて、技術移転を重要な変数として取り込んだ計量モデルと、それとの関連で、ある産業における技術移転が他の産業への波及効果を計測するための計量モデルを作成した。そのモデルの妥当性についての検討とともに経済成長と技術移転の促進の因果関係を明らかにすることがこれからの課題となっている。
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