研究概要 |
平成17年度は,平成15年度に予定していたウェッブ夫妻とベヴァレッジとの福祉政策思想の比較研究を行った。その成果については,小峯敦編『福祉国家の経済思想』の一部として「ウェッブ夫妻における「進歩」の構想-失業対策をめぐるベヴァレッジとの対立-」(科学研究費出版助成を申請中)という論文を提出した。本年度の固有の研究計画としては,4年間の総括として,全体的な研究軸の再確認という課題を設定した。ホブソン,ホブハウスらの新自由主義派あるいは彼らが支えた「リベラルリフォーム」との位置関係,特に,自由貿易・保護貿易,国民的効率運動,関税改革との関連を探ることである。戦間期における各論者の思想変遷をふまえつつ,第二次大戦後アトリー労働党内閣において全面開花した「戦後福祉国家体制」に,どう反映され,反映されなかったかの解明を課題とした。こうした今年度の課題については,現時点ではまとまった成果を出し得ていないが,進歩もあった。特に後者との関係では,アトリー内閣が,これまで示唆されてきたケインズ的要素のみならず,いわゆるLSE(ロンドン政治経済大学)を中心とした,実学,財政学,行政学などをどのように保持,伝承しつつ,戦後福祉国家体制へと持ち込んだかが焦点となると予想した点は正しいのではないかという知見を得ることが出来た。これは次の研究課題として「LSEと制度経済学」(科研費応募済み)というテーマに活かされることになろう。
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